最後の1万円を持ってポーカーをプレーするのと、50万円という資金がある中でプレーするのとでは心境的にどう違うでしょうか?
失ってしまったら破産してしまうという心境と、ベストなプレーをしても失ってしまうこともあるだろうという心境の中では前者の方が必然的に消極的になってしまいます。
トッププロのようなポーカーのスキルが世界レベルの人達でも配られるカードや、コミュニティカードをコントロールすることは出来ません。つまりポーカーをプレーする以上運の要素/分散 を避けることは出来ないということです。
初めてポーカーをプレーする人が勝ち、百戦錬磨のプロが何日、何週間も続けて負けることが起こりえるゲーム、それがポーカーです。たとえ連日負けが続いたとしても自分のプレーに影響が出ない資金と資金管理力がポーカーをプレーするうえで必要不可欠なスキルです。
生涯獲得賞金28億円越え、世界大会16度の優勝を誇る Phil Hellmuth (フィル・ヘルミュース) も下記の動画でバンクロールについてこう語っています。
「95%の才能があったとしても、資金管理力が5%しかなければ破産する。50%のタレントしかなくても95%の資金管理力があればそのプレーヤーはよりいい人生を送ることが出来る』
大きな大会であればある程獲得賞金は跳ね上がり、今まで手にしたことのない大金を手に入れることが出来るからこそ、決して疎かにしてはいけない資金管理力の大切さについて学びましょう。
バンクロールとは
バンクロール(Bankroll)とはポーカーをプレーするためだけの資金の事を言うため、衣食住等日常的に発生する支払い等にバンクロールの資金は使用しないことが大前提です。
ポーカーをプレーするための資金が1,000ドルであれば、オンラインポーカーアカウントに100ドルが入っていたとしてもあなたのバンクロールは1,000ドルで、この金額で破産せず長期的に上手くバンクロールを増やしていけるよう適切な資金管理力が必要です。
1,000ドル使える資金があるからといって、参加費1,000ドルのトーナメントに1度参加するようなことはしてはいけません。負けを最小限にし、利益を最大化させることがポーカープレーヤーとして欠かせないことです。
運の要素もあるゲームだからこそ資金管理力は必要不可欠なスキル
冒頭でも記載しましたが、ポーカーのスキル以上に資金管理力は重要です。トーナメントに優勝し一夜で1,000万円の賞金を手にしたとしても、次の日に1,000万円のトーナメントに出て賞金を獲得することなく敗退してしまったら成功しているポーカープレーヤーとは決して言えないでしょう。
プロのアスリートも常にケガというリスクを抱えてプレーしています。ポーカープレーヤーも負けというリスクを常に抱えプレーしているため、きちんとした資金管理力を身につけ、負けが続いたとしても破産せずにプレーを継続することが出来る資金の余裕を常に持っておくべきです。自分の能力を過信せず、資金管理を怠れば破産する可能性もあるという緊張感を持ち資金を管理していく必要があります。
クリス・マネーメーカーのように初めて出たカジノでの世界大会で優勝することもありますが、自分自身のポーカーの実力を知るには最低10万ハンドは必要と言われています。
10万ハンドをプレーするまではステークスを一定にする必要があり、資金管理力が疎かだと金額が不定なトーナメントやキャッシュゲームをプレーすることとなり、資金が減ってきた時に運が悪く資金が減ったのか、自分の実力不足で資金が減ったのかが判断出来なくなります。
ポーカーをプレーするうえで重要なのはシチュエーション毎の適切な判断力です。資金管理が出来ていない状態でプレーするとお金のプレッシャーから生まれるチップ(お金)を失うことに対しての恐怖や躊躇から消極的になってしまい、ベットするべき場面でチェックしてしまったり、コールするべき場面でフォールドを選択してしまったりしてしまうのが人間の心理です。恐怖心を持っていてはポーカープレーヤーとして成功を掴むことは出来ないため、資金管理をすることでこのような場面での消極的なプレーを避けることが出来ます。
バンクロール管理方法
ポーカーのみで生計を立てているプロや、娯楽で楽しんでいる人など様々なプレーヤーが存在するためそれぞれポーカーに使える資金は異なりますが、下記がバンクロール管理の一般論と言われています。
キャッシュゲーム
バンクロールの約5%、20バイイン出来る額が資金管理の最低ラインと言われています。
例えば20ドルバイインのテーブル20NLをプレーするのであれば、最低でも400ドルの資金が必要です。 より大きなバイインのテーブルでプレーしたいと思ってもそのテーブルに合ったバンクロールが出来るまでは我慢し、自分のスキルを上げると共に資金管理力も培うことに専念しましょう。
最低でも50バイインが必要というプレーヤーもいますが、お金のプレッシャーは人それぞれで感じ方が違うので、自分に合った資金を用意すれば問題ないですが、バイイン額が増えれば増えるほど、負けた時の額も増えることは常に頭に入れておきましょう。
Spin&Go
3人で行われるため、ゲーム展開が非常に速いSpin&Goではバンクロールの約2%, 50バイイン出来る額が必要です。 必要な資金は自分の勝率によって大きく異なるため、勝ちが僅かであればバンクロールの約4%, 100バイインあっても資金が足りないかもしれません。
このゲームは強いプレーヤーは分散が少なく、スキルレベルが低いプレーヤーは分散に大きく左右されるため、キャッシュゲーム以上に資金管理力が必要となります。
トーナメント
一般的なマルチテーブルのトーナメントではバンクロールの約1%、 100バイインが最低ラインと言われています。参加費20ドルのトーナメントに出場する場合最低でも2,000ドルの資金が必要になります。トーナメント参加のチップ量が少ないトーナメントや、再エントリーが可能なトーナメントは分散が非常に激しくなるため、100バイイン以上の資金を持つことが推奨されています。
資金管理を疎かにした実例
世界大会などのビッグタイトルを獲得しても、その後の資金管理がしっかりとされていなければ、破産をし借金生活を余儀なくされるトッププロも数多くいます。天性の才能を持ち史上唯一の世界大会3度の優勝を成し遂げたレジェンド Stu Ungar(ステュー・アンガー)も資金管理力を怠った結果破産し、借金生活に陥ってしまったトッププロの1人です。
ジンラミーというカードゲームで地元ニューヨークで名が知れ渡っていた彼は、強すぎるがあまりに対戦してくれるプレーヤーがいなくなったため、ラスベガスに移住し本格的にポーカーをプレーし始めます。
1980年に出場したWorld Series Of Poker Main Eventでその当時27歳だった彼は見事に優勝し、その当時の史上最年少チャンピオンとして名を刻み36万5千ドルの賞金を手にしました。翌1981年も同じ大会で優勝し100万ドルの賞金を手にし名実共に世界トッププレーヤーとなりました。
しかし彼はこの時既に薬物依存と闘っており、ポーカーで手に入れた賞金の全てをスポーツ賭博や競馬等のサイドギャンブルで溶かしていたのです。
多額の借金と長年の薬物乱用からの肉体的ダメージを抱えていた彼ですが、ポーカープロ仲間のBilly Baxter(ビリー・バクスター)の融資を受け1997年の世界大会に出場することとなりました。
トーナメント初日に既に彼の体は悲鳴を上げており、彼自身も周りに『体が持たない』と漏らしていたほど。しかし周りの奨励などもあり、初日を無事に通過した彼はそのまま優勝し再度100万ドルの賞金を手にしたのです。
16年の時を経て彼は見事なカムバックを果たしました。
翌1998年に彼はラスベガスのモーテルで45歳という若さで波乱万丈の人生に幕を閉じました。
トッププロでさえ羨む才能を持っていたからこそ、資金管理がしっかりと出来ていれば彼はより多くの大会に出場し功績を残し、殿堂入りも果たしていたことでしょう。
ポーカープロが行っている資金マネジメント
バンクロールの管理は人それぞれですが、参考までにトッププロプレーヤーのAlec TorelliとHristivoje Pavlovic 2名の資金管理方法を紹介します。
キャッシュゲームを主に活躍しているAlec Torelliですが、高校生の時に初めてプレーした参加費30ドルのトーナメントで優勝し、2,700ドルの賞金を手にしたところから彼のキャリアはスタートしました。
トーナメントはリターンが大きいがリスクも大きい(賞金を手にする確率が低い)、キャッシュゲームはコンスタントに稼ぐことが出来るがリターンが少ないことに気づいた彼はパレートの法則を自身の資金管理に用いています。80:20の法則とも言われるパレートの法則は全体の数値の大部分は全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているとしています。
この法則を基に彼は80%のバンクロールをキャッシュゲームに、残り20%をトーナメントの資金として分配しており、キャッシュゲームとトーナメントではリターンも異なるため、資金配分も異なるべきと下記の動画で説明しています。
上り幅は狭いがキャッシュゲームでコンスタントに長期的な利益を生み出し、トーナメントで回数は少ないが多額の賞金を手に入れてきたことが長年ポーカープロとして生計を立てられている彼の資金管理法です。
GGポーカーの契約プロであるHristivoje Pavlovicは1日に約30のトーナメントに参加していますが、オンライントーナメントに参加する際のバンクロールは下記のように分配しています。
➣通常のトーナメント (10分~15分でブラインドアップ): 0.5%, 200バイイン
➣ターボトーナメント(5分~8分でブラインドアップ): 0.25%, 400バイイン
➣ハイパートーナメント(3分~5分でブラインドアップ): 0.15%, 600~800バイイン
参加者や参加人数によってアジャストすることもあるが、原則上記の資金管理を行うことで数週間分散に散ったとしても継続して過去4年間プレー出来ていると下記の動画で語っています。
プロのアスリートとは違い、ポーカープレーヤーに固定の給与という概念はありません。
運要素があるからこそ、トッププロでも負けるときは負けるのがポーカーです。
ポーカーのみならず人からお金を借りるという行為は信用・信頼関係を崩してしまう危険性もあるため、自分の資金でプレーするようにしましょう。
継続的にプレーするには自身の資金管理力が必要不可欠で、ステュー・アンガーのようにポーカープレーヤーとして輝かしい実績を残したとしても、資金管理を疎かにしてしまうと借金生活を余儀なくされてしまい、自分の仲間も離れて行ってしまいます。
ポーカーのスキル向上も大切ですが、自身の資金管理力がないとポーカープレーヤーとしては絶対に成功することはないので、ポーカーで生計を立てているプロの管理方法を参考にしながら、自分に合った方法で資金を管理し、利益を生み出していきましょう。
海外にポーカーをしに行く際やオンラインでポーカーをする際も、バンクロールの事は常に考え、正しい管理を行いスキル以外の分野でも一流の選手を目指しましょう。